がんによる栄養不良を和らげるために、心がけたい食事のこと

がんによる栄養不良を和らげるために、心がけたい食事のこと

栄養状態が治療に直結するのは「食欲がない時、ごはんを食べやすいようにする工夫」でお伝えした通りです。
がんに関して「きちんと食事する」に加えて必要な栄養素を意識することで、がんの悪液質へ向かうことによる栄養不良を改善できる可能性があります。

がんになると体重が減る理由

がんの進行や治療から消化器官が狭くなったり、抗がん剤治療の副作用やストレスによる食欲不振もありますが、食事をきちんとしていても体重が減っていってしまうことがあります。
これは、がんの悪液質*へ向かうことによるものです。
悪液質の影響は体重減少にとどまらず、倦怠感や疲れやすい等といった症状が現れ、治癒力や免疫力も低下させてしまいます。

悪液質の場合は単に栄養状態が悪くて痩せているわけでは無いので、強制的にカロリーを与えたとしても体重は元に戻りにくくなります。
なぜカロリーを摂取しても体重が増えないのかというと、がん細胞の多くは好んで炭水化物由来のブドウ糖をエネルギー源として利用し、副産物として乳酸を作り出します。体はエネルギーを使ってその乳酸を再びブドウ糖に変換するのですが、それをまたがん細胞が利用してしまうイタチごっこが起こるためです。

悪液質を和らげる栄養の働き

がん悪液質では、がん細胞と身体とでタンパク質の取り合いになるためタンパク質を補給することが大切です。

また、一部のがん細胞はエネルギー源として脂質を利用することが困難なようで、高炭水化物食よりも高脂肪食の方が、脂肪の種類によっては悪液質を改善できるということも分かってきました。

では、具体的にどんな脂肪を取るのが良いのでしょうか。

脂肪の成分にn-3系脂肪酸と、n-6系脂肪酸というものがあります。

n-3系脂肪酸➡️EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)と呼ばれ、主に青魚の油に多く含まれる
n-6系脂肪酸➡︎菜種油、コーン油、紅花油、ごま油など、植物油多く含まれる

この栄養素は私たちが生きていく上では必要不可欠ですが、どちらも食べ物からの摂取が必要になります。

この両者、何より大切なのはバランスです。

n-6系脂肪酸は炎症や腫れがんの転移を助長する性質ももっていて、n-3系脂肪酸にはそれを制御する働きがあるからです。
健常な人でもn-3系とn-6系の比率が4:1になるように摂取するのが良いとされていますが、昨今の食生活ではどうしてもサラダ油をはじめとするn-6系脂肪酸を摂取するケースが多くなりがちです。

特にn-3系脂肪酸のEPA(エイコサペンタエン酸)は悪性質の原因となる炎症性サイトカイン働きを制御し、必要な筋肉のタンパク質の分解を抑えるよう働くことが分かってきました。
1日2gの摂取で体重減少や体力の低下を予防できると言います。
とはいっても、EPA(エイコサペンタエン酸)を2gというと1日に大量の青魚を食べなければなりません。
そこで保健機能食品や医師の判断で処方されたサプリメントを、指定の用法容量をきちんと守りつつ試してみることで、栄養を効率よく摂取できる場合もあります。
(当然ですが「これで癌が治る」とうたっているような怪しいサプリや商品には手を出さないようにして下さい。)

以上から、がんの栄養不良を和らげるには、脂質の摂取量全体を適切な量になるよう配慮した上で、タンパク質とEPA(エイコサペンタエン酸)の補給を念頭に置いた栄養摂取を心がける事が大切といえます。
しかし同じ食材のものばかりを食べ栄養が偏りすぎてもよくありませんし、飽きてしまうと思います。
心がけとして意識し、ミネラルビタミンなども含め全体としてバランスの良い食事を美味しく食べることが大切です。
 
*=悪液質とは20世紀以前は栄養不良により衰弱した状態を指す曖昧な表現でありましたが、2006年に米国ワシントンで行われたコンセンサス会議で、「悪液質は基礎疾患に関連して生ずる複合的代謝異常の症候群で、脂肪量の減少の有無に関わらず筋肉量の減少を特徴とする。臨床症状として成人では体重減少、小児では成長障害がみられる。」と定義されました


参考URL:
悪液質-What is cancer cachexia? – 日本緩和医療学会ニューズレター
EPAとは?-サラサラ生活向上委員会
脂肪酸(飽和・n-6系多価不飽和・n-3系多価不飽和)-栄養成分ナビ-Glico
参考文献:がんになっても心配ありません 2018年8月30日 初版第1刷発行 監修:公益財団法人 がん研究会 「栄養、なぜ大事なのか」監修者:比企 直樹(医学博士)

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