「合併症予防」「副作用緩和」に。がん治療中のリハビリの重要性

「合併症予防」「副作用緩和」に。がん治療中のリハビリの重要性

がん治療中の筋力・体力の維持のため、近年のがん治療では、リハビリを積極的に活用するようになりました。「合併症を予防する」「副作用を和らげる」この2つの目的別に実際にどう取り入れられているかも含めて説明していこうと思います。

リハビリで合併症予防する

例えば、開胸や開腹の手術を予定している患者さんに対して手術の前から呼吸の訓練をします。
このリハビリを受けることにより肺炎など手術後の合併症が発生する確率を下げることができます。

手術や放射線治療の合併症を予防するためのリハビリもあります。
乳がんの手術でリンパ節を切除した場合は、約20%の人に治療を受けた側の腕にリンパ浮腫が起こると言われています。
手術後の早期から肩関節を動かす訓練を受けることによりリンパ浮腫の発生を減らすことができます。

リンパ浮腫についてはこちらの記事に対処法等を紹介しています。
 

リンパ流れの滞りによる「リンパ浮腫」の初期症状と予防ケア

乳がんの手術で腋窩リンパ節(わきの下のリンパ節)を切除した場…

リハビリで副作用を和らげる

軽い運動は副作用で訪れる睡眠障害や便秘の改善につながります。
例えば、消化器がんの手術後2日目から、自分の最大の心拍数の60%程度の運動をするリハビリを受けると、受けない時に比べて術後経過が良好という事があります。
何らかの形で体を動かす事はとても大切ですが、手術の種類によっては術後の早期に運動する事が難しい場合もありますので、無理をせず主治医や理学療法士の指示に従って下さい。

また、有酸素運動や筋力トレーニングを行うことにより、抗がん剤治療や放射線治療に伴う倦怠感などの副作用が改善したり、白血球やリンパ球が増加することも報告されています。

体を動かす事はQOLの維持にも繋がります。がんになると「何がなんでも安静にしていない」といけないと誤解されがちですが、治療ではリハビリもセットにして考えることが大切です。



参考文献:
がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版 – 公益社団法人 日本リハビリテーション医学会 診療ガイドライン委員会 がんのリハビリテーション診療ガイドライン改訂委員会 委員 編集
がんの理学療法 (理学療法MOOK 21) – 責任編集:井上順一朗(神戸大学医学部附属病院 リハビリテーション部)
神津 玲 (長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 医療科学専攻)

抗がん剤治療を受けるときに読む本 – 著者 加藤隆祐 小樽協会病院消化器内科主任医長。日本内科学会認定医、日本消化器病学会専門医、がん治療認定医、日本消化器内視鏡学会専門医。

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