乳がんについては、次々と新しい治療法や薬が研究・開発されており、患者さんの負担が少ない治療法も増えています。
切らずに治す局所的治療
乳房部分切除術で乳房を残すことが可能になり、切除範囲が小さくて済むケースもありますが、手術で切開することの身体的負担は少なくありません。
そうした患者さんの負担をできる限り軽減するため、ほとんど切らずに治療できる「非手術的療法」が研究開発されています。
手術をしない治療は、メスによる切開を行わないため入院期間が短くて済み(治療によっては日帰り治療も可能)、乳房に傷もつかず、変形もほとんどありません。
ただし、これらの治療法は未承認の実験的な治療ですので、治療法について十分な説明を受け、かならず臨床試験として実施されていることを確認してから判断するのがよいでしょう。
ラジオ波熱焼灼療法
針状の細い電極をがん細胞がある部分に刺し、ラジオ波という電磁派でがん細胞を焼き切る治療法。肝臓がんなどでは多く行われています。
早期がんには、先進医療として非常によい治療であることがわかってきていますが、まだ開発段階ですので、承認されている施設で受けることが推奨されます。
非切除凍結療法
高圧のアルゴンガスとヘリウムガスでがん細胞を凍らせて破壊する治療法。
急激に凍らせるとがん細胞内の水分が凍り、その後体温で溶けた水分ががんの細胞膜を破裂させてがん細胞自体を壊します。先進医療ではありません。
集束超音波治療(FUS)
超音波のビームを集束させてがん細胞を熱凝固させて焼く治療法で、子宮筋腫の治療などでも広く行われています。
MRI画像で焼く部分を確認しながら治療を行います。先進医療ではありません。
新しい放射線療法
機器類の進歩に伴い、放射線療法でも新しい治療法の研究・開発が進んでいます。
できるだけ周辺の正常細胞を傷つけず、がん細胞だけに集中して高線量の放射線を照射するような治療が行われています。
強度変調放射線治療(IMRT)
放射線の分布を、腫瘍に沿った複雑な形状にするために、空間的に不均一な照射ビームを多方面から照射する技術。
従来の放射線治療とは異なり、まず放射線の分布を先に決めて、それを実現させるために放射線の方向と形を不均一に変化させます。
陽子線治療
重粒子線治療とともに「粒子線治療」と呼ばれ、先進医療の扱いになっています。
からだの表面近くには影響を与えず、決められた一定の深さで完全に停止し、その直前に大きな放射線量を放出するという特性があります。そのためX線やγ(ガンマ)線より副作用が少なく、集中的にがん細胞を殺傷できます。
重粒子線治療
がんの殺傷効果は陽子線治療より高いのですが、装置が大きいため、費用も陽子線治療より高額となります。
陽子線治療・重粒子線治療については、こちらの記事にも記載しています。
参考文献:国立がん研究センターの乳がんの本 – 監修木下貴之
国立がん研究センター中央病院乳腺外科科長 / 田村研治 国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科科長/通院治療センター長