乳がんの治療を大きく分けると、手術、薬物、放射線の3種類で、これらを組み合わせて行います。
このうち、手術と放射線は、乳房のがん細胞をターゲットとして切除したり殺したりするため、「局所療法」と呼び、全身に散らばった可能性のあるがんをターゲットとする薬物療法は、「全身療法」と呼びます。
それぞれがどのような治療法か、簡潔にまとめたいと思います。
手術療法
乳房にできたがんを切除する治療法。
がん細胞を小さくしてから手術を行う「術前薬物療法」、切除後に残ったがん細胞を殺す「術後放射線治療法」を組み合わせることもあります。
乳房部分切除術
がんとその周辺組織だけを切除する方法で、「乳房温存術」とも呼ばれます。
通常は術後放射線療法とセットで行われます。
乳房切除術
乳房全体を切除する治療法。
乳がんが広範囲に広がっている場合や複数のしこりが離れた場所に多発している場合に選択されます。
リンパ節切除
わきの下のリンパ節を広く取り除く「リンパ節郭清」、早期がんにはがん細胞の転移が最初にみられるセンチネル(見張り)リンパ節のみを切除して顕微鏡で検査する「センチネルリンパ節生検」が行われます。
乳房再建
乳房全部を切除した後、シリコンなどの人工物や患者さん自身の腹部や背中の脂肪で乳房のふくらみを取り戻す手術。
薬物療法
「手術前にがんを小さくしておく」「再発予防のため」「手術が困難な進行がんや再発に対して延命およびQOLを維持・向上させる」などを目的に行われます。
化学療法
いわゆる抗がん剤治療。
複数の抗がん剤を組み合わせて、繰り返し治療することもあります。がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を及ぼすことから副作用が起こりますが、副作用の予防対策も進歩しています。
ホルモン療法
女性ホルモンの受容体がある乳がんは、女性ホルモンの分泌によってがん細胞を増殖させてしまうので、女性ホルモンの働きを抑えます。
分子標的治療
がん細胞の増殖にかかわる物質ををターゲットにして、その働きを阻害する薬を使用します。
放射線治療
高エネルギーのX線などを照射してがんを殺す治療です。
乳房(部分)切除術の後や再発進行がんへの治療として行うこともあります。
参考文献:国立がん研究センターの乳がんの本 – 監修木下貴之
国立がん研究センター中央病院乳腺外科科長 / 田村研治 国立がん研究センター中央病院乳腺・腫瘍内科科長/通院治療センター長